留学先の決め方

「留学してヨーロッパで学びたい」と思っても、先生の知り合いなどのつてがない場合は何をどうすればいいかわからないと思います。その前に、ただ漠然と「なんとなくドイツに行きたい」などはっきりとしたものがないまま留学先を決めるのはとても危険なことです。ここでは大学を卒業してすぐ留学する人に向けての話を書きます。

留学で挫折するのに多いパターン

・オーケストラといえばドイツだからドイツに行きたい
・ドイツはオーケストラがたくさんあるしオーディションも多いから日本よりチャンスがあるかもしれない
・ドイツに行く人が多いから
・ウィーンは独自すぎるらしいからドイツにいく
・フランスはオーケストラに就職できないらしいからドイツに行く

などなどの理由で留学すると、挫折するか、卒業しても「なんか思ってた留学じゃなかった」となる可能性があります。

誰に何を習って将来どうなりたいか

そもそも
「ヨーロッパで何としても働きたい、日本には帰りたくない」
という人か
「どうしても勉強したいことがあり、活動場所にはこだわらない、日本でも働きたい」ということでも大きく違います。

一番重要なのは国ではなく先生で決めることです。

実際日本のオーケストラのオーディションを通らない人がヨーロッパのオーケストラに入れるという可能性は限りなく低いです。オーケストラも多いですがやっている人の数も競争率も何もかもが日本より高いです。
かなり地方の小さなオーケストラであってもトランペットで100人以上が世界中から受けに来るような状況です。

また、トランペットの場合は楽器も変わることを覚悟したほうが良いです。 ピストンからロータリーがメインになるというのはかなり大きな違いですし、求められる音が日本とはまるで違います。

どうしてもヨーロッパでオーケストラに入りたいという強い信念がある場合には「ドイツの弟子を多数オーケストラに合格させている教授」に習ったほうが良いです。

このドイツでは有名な先生たちや大学は、日本ではほとんど知られていません。

もちろんハンブルクのマティアス・ヘフス氏とカールスルーエのラインホルト・フリードリヒ氏の2つのクラスがダントツの就職率ですが、それ以外にもいくつもあります。

ドイツの先生の調べ方

身近に現地の情報に詳しい人がいれば話は早いですが、そうでない場合は自分で調べる必要があります。

クラスのFacebookのページを持っている教授も最近は多く、学生の実績を多く掲載している場合があるのでチェックするのがおすすめです。

また大学のホームページでもふつう調べることができ、ウェブサイトから録音を聞いたりすることもできると思います。

そして大学のページにはメールアドレスが載っていることも多く、そこから連絡することも可能です。

SNSやホームページのコンタクト、大学のメールアドレスから全く紹介無しで連絡しても返信をくれることがほとんどです。
そこが日本と違う感覚ですが、失礼にはなりません。正しい英語かドイツ語の文章で連絡すれば演奏を聴いてくれるはずです。

もしそれ自体が気が重いとか気が引けてしまう場合は、留学自体しないほうが良いです。留学したらもっと大変なことが山ほどあります。

ある程度の年齢になってから勉強しに行く場合

二十代後半で勉強のために留学したい場合もあると思います。その場合、オーケストラのオーディションを受けることはほぼ不可能なので、帰国前提で勉強しに行くことになると思います。

その場合は間違いなく大都市に住んだほうがいいです。

プライベートや聴講生でレッスンを受ける場合はレッスンも週に1回も無い可能性が高いので、田舎町に習いたい先生がいた場合でもそこに住むのはお勧めできません。

ドイツの田舎町はきれいですが何もありません。歌劇場があってもそこまでハイレベルではなかったり、日本語での情報が全くないのでそもそも部屋が借りられなかったり。

おすすめとしてはベルリン・ウィーンです。ベルリンは首都なのに物価も高くなく、日本語でいくらでも情報がでてきます。

何よりもベルリンフィルとベルリン国立歌劇場をはじめとした最高の音楽を毎日でも安く聞けます。世界中から巨匠が集まってオーケストラやリサイタルが開かれているベルリンは留学には最高のところです。

ベルリンは交通網もいいので、LCCでどこの大都市でも1時間ほどで100€くらいでいけるうえ、日本語でやり取りできる楽器可能物件を探すことも簡単です。

もちろんいわゆるドイツらしいような田園風景は郊外に行かないとありませんし、スラムのようなところもあったり様々な移民難民がうごめきあっているような美しい街ではありませんが、その分刺激にあふれています。

多様性という言葉の本当の意味を知れる街だと思います。

日本語でバイトできる店も多いです。

私がベルリンで受験準備をしていた時は本当に多くの最高峰の音楽を聴くことができて一生の宝だと思っています。

私は運よく中学生のころからの知り合いの先輩がベルリン国立歌劇場のRainer Auerbach氏を紹介してくれたおかげで、ベルリンで週1-2回のレッスンを受けることができましたが、楽屋に突撃して頼んだらレッスンしてくれる人は多いです。

そのようにいろんな人に連絡したり突撃して20人以上のドイツのプロオケの人達からレッスンを受けることができました。