あくびのように、花の香りをかぐように吸う

まずトランペットを吹くときは常に空気がたっぷりと肺を充満したようなイメージをもつこと重要になります。ただし、ストローで何かを吸い込んだりするときのように強く吸い込んではいけません。
「腹式呼吸」のことはまずは考えず、おなかに意識がいかないようにしてください。腹筋は息を吐くのには使いますが吸うときに意識すると固くなり、肋骨の広がりを阻害してしまい結果的に息が吸いづらくなります。

一番理想的な吸い方はあくびです。

あくびをする時は強く吸い込んだり息をたくさん吸おうとは考えていませんが、リラックスした状態で息がたっぷりと肺に入っていきます。

それと似た状態として
花の香りをかぐ時 の状態もよいです。臭いものの臭いをかぐ時の鼻を使って強くすこむのではなく、良い香りをかぐ時のように鼻を通すようにリラックスして吸うことが重要です。

腹式呼吸とは  お腹のことを考えない

息を大量に吸い込むにはどうすればよいのでしょうか。
その方法として昔から言われるのが「腹式呼吸」と呼ばれるもので、

「息をおなかに入れる」「お腹をパンパンに膨らませて力を入れて保つ」「肩が上がらないように下に押さえながらお腹を出す」
といったものです。
これらは全て結果であり方法ではありませんので注意してください。

まず空気はお腹には入りません。

しかし正しい呼吸をすると結果的にお腹がでます。その結果だけを見て真意を理解していないと「吸うときにお腹を出せばいいんだ」という誤解をしてしまいます。

腹式呼吸の仕組みは順番が非常に重要です。

1.息を吸い込むと肺が膨張する
2.肺をそれ以上膨張させようとしていくと、肋骨と胸郭が広がっていく
3.肋骨にドーム状についている横隔膜が引っ張られて平らになる
4.横隔膜が下がると内臓が押し出されるためお腹がでる。
5.横隔膜は戻ろうとする動きをするため、これをコントロールすることで息を吐きだそうとしなくても息が出ていく
イメージするためにCGで動きを見てみてください。

このようにお腹はあくまでも結果的に出るだけなので、おなかがどれほど出ているかで呼吸の深さを測ることはできません。
試しに息を吸わないでお腹をへこませたり出したりしてみてください。できると思います。
一番陥りがちな誤りは、「お腹をだす」と考えてその動きだけに注目しているせいで全く息が吸えていないということです。

息を吸うときにお腹を出そうとする腹筋を操作しようとすると、肋骨の動きがロックされてしまうことが多いです。

まず今試しに息を吸いながら両手で肋骨をつかんでみてください。
その時に全く動いていない場合息が正しく吸えていません。
肋骨が動かずにお腹だけが動いている場合は、横隔膜が下がった結果ででているのではなくただ腹筋を操作しているだけということになります。

解剖学チックなことを言っているかもしれませんが、私はあくまでも音楽家であり医学の専門家ではありません。全ては「そのようにイメージすることで演奏しやすくなる」というものであるということをご理解ください。

実際のところトランペットを吹くときの全ての作用は、自分の創造によってその結果を出すことしかできません。
極論は「モーリスアンドレみたいな音で吹こう」と思って音をだそうとしていい音がでたら、具体的に筋肉がどんな形をしているか自分が知る必要も理解する必要もないということです。
ただ呼吸に関してだけはある程度ロジックが通用するところではあります。

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横たわっている時の体の動きを考える

ベッドに横になり、「楽器を吹こう」と思わずにゆっくりリラックスして鼻からゆっくり息を吸って口から吐くということを繰り返してみてください。
ただ自然に呼吸していると、胸と連動してお腹が動くのを感じると思います。もし楽器を吹くときにこの状態と違う場合には注意してください。

肩を無理に下げたりしない

横隔膜が動いていない場合、つまり肋骨が全く動いていない状態で息を吸うと、息は上に上がってくる感覚があります。浅い呼吸。この時に一生懸命吸おうとすると肩がぐっと上がってしまい、これでは細い息しか出ません。
ただ、「肩を上げちゃいけない!」と教わった場合に肩を押さえつけるように下にぐっと下げてしまう場合があります。
これも絶対にやってはいけません。肩を無理にさげるような筋肉を使うと、これもまた肋骨の自然な広がりを妨げ、ロックされてしまい、首にも力が入りやすくなってしまいます。

左手の手のひらを喉元、鎖骨のあたりに置いてたくさん吸おうとせずゆっくり吸ってみてください。触れている方が力が抜ける場合が多く上に持ち上がった時に自覚しやすいです。

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肺は思っているよりも既に上まである

下に下げよう下げようと思いすぎて思うように息が吸えない場合、胸や肋骨に力が入っていることが多いですが、その硬直を和らげる一つの考えとして
「肺は鎖骨のあたりまである」と自覚することです。
肺は胸のあたりというイメージがありますが、実は鎖骨くらいまで最初からあります。最初から上の方にあるのです。なのでここから息を吸っても膨張はしますが上にはスペースがありません。
そのようにイメージするだけで、息が上に上がるのが抑えられます。

息を吸うときは風船が膨らむときのように放射状に広がるんだということをよくイメージしてみてください。


喉をひらこうとしない

大きく吸い込もうと考えたときに「ホー」と音がするように、喉仏をぐっと下げて吸おうとする場合がありますが、これは非常に危険です。

喉は何もしていない自然の状態が一番ベストな開き具合のためです

そもそも口は呼吸する為の器官ではありません。口で息を吸う場合でも、喉は鼻から吸っている時と同じ状態でいる必要があります。

喉仏を下げたりするとそれに舌が引っ張られておちたり、固まる原因になります。

喉仏の状態が特に変化していないか注意してください。重要なのはあくまでも呼吸は自然の延長線のやり方で、変に操作をしないことです。

「開こう」と考えるのも操作することで力が入り呼吸の妨げになるので、何もしないままでとにかく自然にしてください。

トランペットの呼吸まとめ

  • 息を吸うと肋骨が広がり、それに伴って横隔膜が下がる。それが戻ろうとする力で息を吐ける。
  • お腹を操作して息を吸おうとすると逆に吸えなくなる。
  • 花の香りをかぐように、あくびをする時のように吸う
  • 吸うときに喉仏を下げたり喉を無理に開こうとしない
  • 深く吸うことと下に押し下げたり押さえつけることを混同しない。
  • あくまでも自然な状態